画像引用:「SlatorCon Remote March 2022公式ホームーページ」より


言語サービス業界のコンサルティング・リサーチ会社スレーター(本社スイス)が主催する、「スレーターコン リモート 2022(SlatorCon Remote March 2022)」が2022年3月16日にオンラインで開催されました。

サイマル・インターナショナルの取締役社長 林 純一が、イベントセッション「ーBetter Togetherー多言語イベントでのエンゲージメントの機会」に、パネリストとして参加しました。

パネルディスカッションの一部をご紹介します。



〇スレーターコン(SlatorCon)とは?


スレーター社は言語サービスに特化したコンサルティング・調査情報提供サービスを行っています。

「スレーターコン」は、最新トレンドを把握したい言語サービス関係者、通翻訳者をターゲットとした有料イベント。2018年には東京でもリアルイベントとして開催されています。

「スレーターコン リモート 2022」は、リモート開催で、世界中の言語サービスのビジネスリーダーがスピーカーとして招かれ、様々な角度からビジネスセッションが行われました。

Slatorcon remote March 2022公式サイト


サイマルが参加したパネルディスカッション

テーマ:「-Better Together-多言語イベントでのエンゲージメントの機会」

パネルディスカッションはインタープリファイプラットフォームを使いサイマル通訳者による同時通訳もリアルタイム配信されました。



〇-Better Together- ~ともに、より良く~


司会:まずは簡単に自己紹介をお願いします


サイマル:サイマル・インターナショナル社長の林 純一です。サイマル・インターナショナルは1965年に創設された日本で一番歴史のある通訳エージェントです。通訳と翻訳に幅広く対応し、通訳エージェントとしては日本市場ではトップシェアを有しています。政府、企業、海外企業が主要な取引先です。


インタープリファイ:リチャード・ルークロフトです。インタープリファイ社で戦略的提携とグローバルヘッドを担当しています。インタープリファイは2015年にスイスで設立、クラウド遠隔同時通訳(RSI)テクノロジーを提供しています。最近はライブキャプション機能もリリースしました。200名以上の社員が29か国で従事しています。通訳サービスを、よりアクセスしやすく、スケーラブルに、そしてエコフレンドリーに提供しています。


アンコール:私はアンコール社でアジア地域のゼネラルマネージャーをしているマルコ・カイラオです。中国・香港・韓国・シンガポール・タイを中心にアジア太平洋地域、オーストラリアやフィジー、ニュージーランドも担当範囲です。当社はイベント製作にかかわって80年以上、年間で約170万件のイベントを実施しています。2,000社以上の会場パートナー、約3~400の人達と10か国をまたいで仕事をしています。


司会:まず、人材 通訳者、翻訳者をどういうふうに確保されているのでしょうか?


サイマル:サイマルでは多くの優秀なプロフェッショナル通訳者と契約しています。登録数は数千人。何十年も一緒にやっている経験豊富な通訳者がたくさんいます。

また、サイマルは1980年に創立されたサイマル・アカデミーという通訳者・翻訳者養成学校を有しており、これまでに1,000人以上の通訳者を輩出しています。通訳者のプロとして、政府や国際会議などの非常にレベルの高い通訳の仕事が対応できるようにになるには、英語力は当然ですが、通訳技術を身に着ける必要があります。ケーススタディを重ね、約5~10年を経て一流といわれる通訳者になります。この人達が日本のトップクラスの通訳者といえます。


司会:アンコール社では、通訳や翻訳が必要な場合はどのようにされているのですか?


アンコール:外注しています。サイマルのような言語サービスの提供会社、関係会社に、私たちからご紹介という形で対応しています。パネルディスカッションのテーマ「 - Better Together -ともに、より良く」にマッチしていると思います。


司会:サイマルは養成もされているということですが、どのように通訳者の経験やレベルを評価しているのでしょうか? 


サイマル:サイマル・アカデミーでは、3~4年でスキルを身に着けることができる半年タームのカリキュラムを組んでいてタームごとに卒業試験があります。

最初は逐次通訳、ステップを踏み同時通訳やウィスパリング通訳といった手法はもちろんのこと、国際会議のような緊張度の高い会議で通じる言い回しができるか、細かいデリケートな言い回しができるか、など様々な評価観点を設けています。

評価は講師であるベテランの通訳者たちが複数で行い、等級認定し、その等級に応じお客様からフィーをいただいています。欧米では等級に応じたフィーという考え方はなじみがないかもしれませんが、日本は等級によりフィーが異なるのが一般的です。

通訳者にはそのような通訳能力に加え、最近ではインタープリファイのようなRSIや、WEB会議システムといったテクノロジーを使いこなすスキルも必要となってきました。以前は通訳に必要な設備は通訳エージェント側で用意をしていましたが、今は通訳者が自宅でPCを自らセッティングしてお客様とやりとりすることが求められてきています。その点でインタープリファイのサービスは、通訳者のケアやサポートが非常にしっかりしていて、遠隔モニタースタッフによる万全の対応があるので安心しています。


司会:サイマルがそのような養成学校を有しているのは言語サービス業界にとってもすばらしいことですね。



〇言語サービス業界へのコロナの影響とテクノロジー


アンコール:イベントビジネス業界はご存じの通りコロナ禍で大きな影響を受けました。ようやく回復してきたところですが、今では たくさんのやり方が出てきました。私たちは「前例」をつくって、どうやってお客様をイベントに巻き込んでいくかを懸命に模索しています。今後は対面のオンサイトイベントがどんどん増えていくと思いますが、ハイブリッドのイベントが消えることは無いと考えています。


サイマル:感染流行がはじまった2020年春はあらゆる会議が一斉に消えてしまいました。2020年夏頃から社内会議を中心に戻り始め、取締役会、経営会議、海外との交渉といったスモールミーティングは復活してきています。ただ大きなカンファレンスや政府間交渉、たとえばG7とかG20というような会議は一同に集まることは難しくオンライン開催になっています。もう一つの影響は海外渡航制限ですね。海外との行き来ができずリモート会議をするという形になっています。


司会:今日のイベントも”ホピン(Hopin)”というオンラインイベントプラットフォームのテクノロジーを使っています。テクノロジーにより様々な方法で人と会って話をすることができるようになりました。こうした傾向の中でテクノロジー要件面ではどのように対処されてきましたか?


インタープリファイ:インタープリファイは独自開発したマルチリンガルのカンファレンステクノロジーを有しています。IMFや国連の各機関などにもご利用いただいています。ここ数年の状況をみると、遠隔通訳のテクノロジーだけでなく様々なイベントテクノロジーが急激に展開しています。

私は、昨日まさにメタバースイベントで5か国語でのパネルディスカッションを対応しました。皆さん、メタバースイベントに参加したことがありますか?本当にバーチャルな世界に没入することができ、驚きました。テクノロジーについてはここ数年で様々なチャンスが開かれたと思っています。

最近「Zoom疲れ(Web会議疲労)」などと言われるようになりましたが、実際のところ注意力が持たなくなったわけではないと思うのです。Netflix (ネットフリックス)なら何時間でも見続けることができます。ということは「意思決定にかける時間」が短くなったということですね。そういう意味でも参加者の立場になって、そのコンテンツを「ローカライズ」した形で提供するということ、参加者の母国語で様々なオプションを提供することが大切だと考えています。


司会:インタープリファイが提供しているのはテクノロジープラットフォームですよね。そして通訳は、サイマルのような言語サービスプロバイダーと提携されているわけですね。


インタープリファイ:私たちはテクノロジーサービスビジネスです。イベントプロフェッショナルや、サポート技術者、言語プロバイダー、様々な方と仕事をしています。私たちはハンズオン、現場主義を大切にしています。


司会:テクノロジーが新しいマーケットをつくりあげましたね。以前は「スレーターコン東京2018」という対面のイベントを東京で行ったこともあります。今はこのようなコロナ禍状況のなかで、インタープリファイなどのテクノロジーを通し、限られたコストの中で、今まさにやっているように言語通訳を入れることが可能になりました。新しい技術が新しい市場をつくるのだと思います。



〇これからの展望


司会:ここからは未来の話をしていきたいと思います。

今は2022年の3月です。渡航制限も緩和されてきています。今後のイベント業界の動向はどうなると予想しますか?

対面のオンサイト会議は戻ってくるでしょうか?


サイマル:日本では感染者数のピークは越えてきたようです。それと同時に海外渡航も徐々に緩和されてきています。リアルに海外との人の行き来が始まると、海外からきた講演者が大きな会場でカンファレンスをし、それを通訳するシーンもでてくるでしょう。やはり人が動くこと。つまり海外渡航制限がどうなるか。そのためには世界的に感染がおさまってくることがポイントだと思います。半分は期待をこめて 夏頃には通常に戻ってくるのではと思っています。


アンコール:イベント面でのキートピックはやはり渡航制限の緩和になると思います。政府がいつ水際対策を緩和するか。アジアでは徐々に緩和が進んでいます。周囲のプランナーたちは対面イベントが戻ってくるだろうと考えています。やはり「みんな人に会いたい」のです。みんながちょっと現状に疲れていて、人と会えることをすごくワクワクしていると思います。大切なのはワクチン、そしてハイブリッドですべての安全対策を講じながら検討するということです。様々な制限を前提にどうやってやりくりするか。予測としてはやはり夏くらいからでしょうか。対面イベントがかなり戻ってくるというトレンドです。世界のどの国かによって状況は異なりますが業界の見通しとしては明るいです。


司会:そうですね、慎重になりながらも楽観的にかまえてよいと今年の後半は思えますね。


インタープリファイ:今年初めの状況をみても「どんどん日常に戻ろう、戻りたい」という気持ちがありましたね。みんなが待ち焦がれている、すべての市場が日常に戻ることを期待しています。テクノロジー面では、過去数年で開発されたものがカギとなってくると思います。より大きなオーディエンスにアプロ―チできるよう、ローカライズできるというところに成長のカギがあると思っています。


司会:これからもテクノロジーによってよりよいものが提供できるでしょう。そういったカンファレンス、オンラインのものもハイブリッドのものもふくめて一番大切なものは、インテグレーション(融合)ですね。今回のようにホピンやインタープリファイといったテクノロジーを融合して良い経験を届けることに非常に大きなチャンスがあると思っています。

今回は、純一さんが日本から、マルコさんがオーストラリアから、リチャードさんがタイから参加いただきました。このようなことを実現できるのも技術の力だと思います。今日は本当にありがとうございました。



■イベントに参加して■



サイマルの仕事はグローバルなように見えますが、ドメスティックな視点、特にこの状況下ではどうしても「井の中の蛙(かわず)」の視点になってしまいがちです。今回のパネルディスカッションでは世界トップクラスの会議運営会社や、RSIプロバイダーと市場についてディスカッションできたのは非常に興味深い体験でした。

コロナの影響、そしてこれからという点でも、我々が見ている観点と、彼らが見ている観点は割と一致しているということも確認できました。世界で何が起こっているのかキャッチアップできる機会はとても大切だと感じます。


サイマル・インターナショナル 取締役社長 林 純一